事業会社のための財務モデリング入門
中期経営計画、事業計画作成に特化したシンプルな予測財務諸表の作り方
3講_予測財務諸表シート エリア作成
事前準備を終えたらいよいよ財務モデリングに取り掛かっていきましょう。
まずは予測財務諸表のフレーム(エリア)を作成し、その後計算式を組んでいきます。
過去の財務データの延長線上に予測値を置く
財務モデリングを行うときは、過去数年間の実績を拾うようにしましょう。そして過去の実績推移の延長線上に予測値を置いていきます。そうすることで、現実と乖離しない、関係者の納得を得られやすい計画を作成することが可能となります。
ここでは過去3期分の財務データを拾っていきます。
KPI設定エリアの作成
収支に係る指標
KPI(設定値)を入力するフレームを作成していきます。
まずは、収支に係るKPIです。ここではロジックツリーから、売上に係るKPIとして「顧客数」「客単価」「購入頻度」を。コストに係るKPIとして「売上原価率」「販管費率」をそれぞれ設定していきます。
運転資本に係る指標
次は運転資本に係るKPIです。キャッシュフロー改善を重視する場合はこれらのKPIは必須です。ここでは「売上債権回転日数」「仕入債務回転日数」「棚卸資産回転日数」をKPIとして設定しました。
その他設定値
それ以外のKPIを「その他設定値」にまとめました。ここでは、借入金利の利率と法人税率をKPIとして設定しております。
個別計算エリア作成
次は個別計算エリアについてフレームを作っていきます。何を個別計算するかはケースバイケースですが、ここでは有利子負債と建物勘定について詳細計算を行うエリアを作成していきます。
P/Lエリア作成&実績値入力
続いて損益計算書(P/L)エリアを作成していきます。基本的には一般的なP/L項目で作成すればOKですが、影響が大きい項目や特に重点管理したい項目があれば、独立させて個別管理していきましょう。
ここでは、販管費のうち減価償却費のみ抜き出して個別計算エリアにて別途計算しております。またP/Lについてはこの時点で過年度の実績も記入しておきましょう。
B/Sエリア作成&実績値入力
次は貸借対照表(B/S)のエリア作成および実績値記入を行います。ここでは、自社の貸借対照表項目をギュッと圧縮して必要最小限の構成にするように心がけましょう。やりがちなミスとして全てのB/S項目を表記したがゆえに複雑になり収拾がつかなくなることです。
基本的には、KPIやP/L、個別計算エリアから飛んでくるデータのみで構成し、それ以外は「その他流動資産」などまとめてしまうことをお勧めします。
C/Sエリア作成&実績値計算
次はキャッシュフロー計算書(C/S)エリア作成および実績値の計算を行います。ここでは期初現金残からスタートしそこに営業CF、投資CF、財務CFそれぞれを加減算して期末現金残を求めていく構成にしています。
C/S実績についてはP/LやB/Sから導出するようにしましょう。
期初現金残 –> 期末現金残より
営業CF:当期純利益 –> P/L当期純利益
営業CF:運転資本増減 –> B/Sより売掛金減少額+在庫減少額-買掛金増加額※1
営業CF:減価償却費 –> P/L減価償却費
投資CF:建物 –> 個別計算エリア「建物」の「新規設備投資」
投資CF:土地 –> B/Sより土地増減額※2
財務CF:借入金 –> B/Sより借入金増減額※2
財務CF:資本金 –> B/Sより資本金増減額※2
※1) それぞれ、売掛金減少は+ 在庫減少は+ 買掛金増加は△
※2) 増加は△、減少は+