【財務・会計】総合原価計算を理解する【中小企業診断士】
次は総合原価計算について学んでいきましょう
総合原価計算とは
総合原価計算とは、一定期間に投入されたコストを、その期間内で生み出された生産量で割ることで、一つあたりの製造原価を求める方法です。
一定期間の製造コストや生産量をあわせて計算するため、同じ製品を連続して生産するような大量生産品の原価計算に適しています。
連続的に工程に原料などを投入しているので、その工場の中には製品として完成したものもあれば、全然加工が進んでいないものまで、加工の進捗度にあわせて様々な形でモノが存在しているわけです。
ということで、総合原価計算では完成したものと未完成のものを振り分ける作業が大変重要となってきます。
例題で考えてみよう
ある家具製造会社の原価計算
それでは例題を用いて総合原価計算にたいする理解を深めていきましょう。
とある家具製造会社の例です。
ある月に原材料90、加工費210を使って家具の製造を行い、月末時点で20個の完成品と、10個の仕掛品(加工進捗度10%)ができた。
完成品の原価はどのように計算すべきか?
なお原材料は工程の開始時に全て投入されている
この問題をどのように解いていけばいいのか、一緒に考えていきましょう。
完成品と未完成品でコストを均等割り?
当月投入された製造コストは
原料費90
加工費210
合計300です。
一方で、当月完成した製品は20個、未完成で翌月に繰り越される仕掛品は10個となっています。
この場合、完成品と未完成品の1個あたり製造原価はどのように計算すべきでしょうか?
まず思いつくのは、完成品・未完成品関係なく、数量に応じて均等割りする考え方です。
例えば完成品20個、未完成品10個、あわせて30個あります。
投入された製造コストが300なので、300÷30個で1個10円と考えてもいいでしょうか?
実は、完成品と未完成品を区別せず、数量比でコストを均等にかけていくやり方はあまりいい方法とはいえません。
なぜかというと、加工の進捗度が低い未完成品は、完成品よりも価値が低いからです。
総合原価計算では、加工の進捗度が高い完成品には、より多くのコストを負担させ、進捗度が低い未完成品のコスト負担は少なくする、という考え方をしていきます。
原料費と加工費を分けて考える
それでは、完成品と未完成品で、どのように製造コストの負担割合を変えていけばいいでしょうか。
基本的な考え方として、原材料費と加工費を分けて考えます。
原材料については、完成品も未完成品も区別せずに数量比でコストを振り分けていきますが、加工費については加工の進捗度に応じたコスト按分をおこなっていく、というのが基本形です。
原料費の按分の考え方
まず原材料の按分について考えてみましょう。
原材料については、完成品と未完成品を区別せず、それぞれ数量に応じて振り分けていきます。
その理由ですが、原材料については完成品であっても未完成品であっても使用した量は変わらないだろうという仮定が置かれているためです。
出題される問題には、「原材料は工程の開始時点で投入されている」とのなお書きがあることが大半です。
この記載があるときは、原材料は加工の進捗度合いにかかわらず数量比で按分する、と覚えておきましょう。
ここでは原材料が90投入されています。
それを完成品20個と未完成品10個に、数量比で按分していくと、完成品へは60、未完成品へは30が割り振られます。
それぞれ数量で割り込むと、1個当たりの原材料費は3となります。
ちなみに、原材料を工程の途中で投入するパターンもありますが、診断士試験ではあまり出題されません。
基本パターンのみおさえておけば十分でしょう。
加工品の按分の考え方
次に加工費の按分について考えていきます。
原材料は原則として加工進捗度にかかわらず数量按分していましたが、加工費については完成品と未完成品で負担割合に差をつけていきます。
完成品については、完全な加工がされている、イコール、手間暇がかかっているということで加工費負担大。
未完成品については、加工の手間暇があまりかかっていないということで加工費負担は小さくなる、ということです。
出題されるときには、問題文中に、加工進捗度何%と記載されています。
仮に未完成品在庫が10個あるときに、加工進捗度が10%であれば、10個×10%で1個相当の加工費をかけていく、と考えていきましょう。
ここでは加工費として210が投入されています。
これを加工進捗度を加味して、完成品と未完成品に配分していきましょう。
完成品は20個あります。
一方、未完成品は10個ですが加工進捗度が10%なので、10個×10%で1個相当となります。
まず、完成品への加工費の按分計算ですが、加工費210×20個÷21個で、200となります。
完成品個数で割り返すと、1個当たり加工費は10です。
次に、未完成品への加工品按分計算ですが、加工費210×1個÷21個で、10となります。
未完成品個数で割り返すと、1個当たり加工費は1です。
原料費+加工費
それでは、計算した原材料費、加工費を合計して、完成品・未完成品それぞれの製造原価を計算しましょう。
まず完成品から見ていきます。
原材料は60、加工費は200だったので、完成品にかかる製造原価は合計260です。
完成品個数20個で割ると、1個当たりの製造原価は13となります。
次は未完成品、つまり月末仕掛品在庫です。
原材料は30、加工費は10だったので、未完成品にかかる製造原価は合計40です。
未完成品個数10個で割ると、1個当たりの製造原価は4となります。
このように、加工進捗度を反映することで、完成品と未完成品で製造原価に差をつけることができました。
例題2演習
改めて例題を解くことで理解を定着させていきましょう!
問題
例題 この製品の完成品原価と仕掛品原価を計算せよ
材料費 84,000円
加工費 21,600円
月初仕掛品 なし
月末仕掛品 40個(加工進捗度50%)
当月完成品 100個
なお、材料費は工程の最初に全額投入されています。
解答
解答です。
まず原材料から計算していきます。
今月の原材料費の投入は84,000円。それを完成品と未完成品である月末仕掛品の個数の比率で按分していきます。
完成品の個数は100個、月末仕掛品の個数は40個、合計140個です。
完成品にかかる原材料費は、84,000円×100個÷140個で、60,000円
月末仕掛品にかかる原材料費は、84,000円×40個÷140個で、24,000円
となります。
次に加工費を計算します。
今月の加工費の投入は21,600円。それを加工進捗度を加味した個数で、完成品と月末仕掛品へ按分していきます。
加工進捗度を加味した按分割合は、完成品100個に対して月末仕掛品は40個×50%の20個相当と考えていきます。
完成品にかかる加工費は、21,600円×100個÷120個で、18,000円
月末仕掛品にかかる加工費は、21,600円×20個÷120個で、3,600円
となります。
そして最後に、完成品、月末仕掛品について、それぞれ原材料費と加工費を足し合わせてみましょう。
完成品の原価は、原材料費60,000円+加工費18,000円の合計78,000円です。
これを完成品個数100個で割ると、1個当たりの単価は780円となります。
月末仕掛品の原価は、原材料費24,000円+加工費3,600円の合計27,600円です。
これを月末仕掛品個数の40個で割ると、1個当たりの単価は690円となります。
いかがですか?
一つ一つ手順を踏んでいけば、そんなに難しくないですね。
過去問演習
これまで学んできた知識で過去問が解けます!
問題
平成25年度 第11問です。
以下のデータに基づき、期末仕掛品原価として最も適切なものを、下記の解答群から選べ。
なお、材料は工程の始点で投入される。
(数量データ)
当月投入800単位
当月完成品600単位
月末仕掛品200単位(加工進捗度0.5)
(原価データ)
直接材料費 1,440千円
加工費 1,400千円
(解答群)
ア 560千円
イ 710千円
ウ 2,130千円
エ 2,280千円
解答
解答です。
まず原材料から計算していきます。
今月の原材料費の投入は1,440千円。それを完成品と未完成品である月末仕掛品の数量の比率で按分していきます。
完成品の数量は600単位、月末仕掛品の数量は200単位、合計800単位です。
完成品にかかる原材料費は、1,440千円×600単位÷800単位で、1,080千円
月末仕掛品にかかる原材料費は、1,440千円×200単位÷800単位で、360千円
となります。
次に加工費を計算します。
今月の加工費の投入は1,400千円。それを加工進捗度を加味した数量で、完成品と月末仕掛品へ按分していきます。
加工進捗度を加味した按分割合は、完成品600単位に対して月末仕掛品は200単位×50%の100単位相当と考えていきます。
完成品にかかる加工費は、1,400千円×600単位÷700単位で、1,200千円
月末仕掛品にかかる加工費は、1,400千円×100単位÷700単位で、200千円
となります。
そして最後に、完成品、月末仕掛品について、それぞれ原材料費と加工費を足し合わせてみましょう。
完成品の原価は、原材料費1,080千円+加工費1,200千円の合計2,280千円です。
月末仕掛品の原価は、原材料費360千円+加工費200千円の合計560千円です。
この問題では、期末仕掛品原価を問われていますので、答えは
ア 560千円
となります。